開催報告>「学校・地域の協働で豊かな学び環境をつくる-コミュニティ・スクールと地域学校協働活動を通じて」~第3回SDGsネットワーク事業
当法人は、持続可能な地域社会の実現に向けて、市民活動団体・行政・企業など、多様な機関・団体をつなぎ、セクターを超えた顔の見える人間関係づくりを目的に、2022年度よりSDGsネットワーク事業を展開しています。
第3回目となる今回は「学校・地域の協働で豊かな学び環境をつくる~コミュニティ・スクールと地域学校協働活動を通じて」をテーマに開催しました。
日 時:2024年11月10日(日) 14:00~17:00
場 所:ちがさき市民活動サポートセンター フリースペース大
参加者:33名
ゲスト
竹原和泉氏(特定非営利活動法人まちと学校のみらい代表理事、文部科学省総合教育政策局CSマイスター)
大学で初等教育・社会教育を専攻。フランス・米国・日本で3人の子を育て、ボランティア活動PTA活動を行う。
中央教育審議会臨時委員、コミュニティ・スクールの在り方等に関する検討会議、横浜市立小中学校・神奈川県立高校・特別支援学校で学校運営協議会会長等を歴任。
都浩一氏(神奈川県教育委員会湘南三浦教育事務所指導課長)
茅ヶ崎市立小学校の先生として、教員生活をスタート。小学校2校14年間勤務した後、神奈川県教育委員会湘南三浦教育事務所社会教育主事として配属される。
4年間、PTAや地域を中心とした社会教育関係業務に携わる。
その後、小学校の教頭を経て、現職。
竹原氏の講演 概要
- なぜ、学校と地域が連携協働するのか
日本財団が実施した「国や社会に対する意識」(18歳意識調査)では、数学などの理系のスコアは高いものの、「自分で国や社会を変えられると思う」という問いへの回答は、諸外国に比べて極端に低いスコアとなっています。
日本の子どもには自分で問いを立て、自分なりの方法で答えにたどり着く「学び」が不足しているのです。
掛け算九九のような基礎学力も大切ですが、これからの教育は、実社会の課題を他者と協働して解決に結びつける「探究的な学び」が一層重要となります。今後は、従来のチョーク&トーク(板書と講義)ではなく、ディスカッションやグループワークを取り入れた授業が増えてくると思います。
例えば、田んぼの学習をする際、教科書の内容を覚えるよりも、田んぼに行って農家の方の話を聞いたり、泥んこになる方が知識として定着するはずです。子どもたちが、地域の人々と出会い、様々な経験をすることで、学びが深まっていくのです。
令和3年の中央教育審議会答申「令和の日本型学校教育の構築を目指して」では、「地域とともにある学校」の実現を図るため「コミュニティ・スクールと地域学校協働活動を一体的に推進することが重要である」としています。
- どのような仕組みで進めるか
コミュニティ・スクール(以下CSと表記)を有効に機能させるために重要なことは。
①学校運営協議会委員は、地縁組織とテーマコミュニティの双方から人選すること。
②学校のすべての教職員、地域住民が、熟議を重ねること。そのためには、地域の宝(社会資源)を可視化して共有することが不可欠。
③学校がすべきこと、地域がすべきこと、学校と地域が協働してすべきことを整理し、それぞれの役割を明確にすること。これにより、学校教員の負担を減らすことが可能。
④学校のカリキュラムと関連づけて、協働活動の内容を考えること。「学校と地域が一緒にイベントをすること=協働活動」とは言えない。
- CSは漢方薬であり、糠床である。
CSは、学校運営をバックアップし、多彩なアドバイスを学校運営に反映し、問題が起こった際にタイムリーに対処できるなど、漢方薬のようにジワジワと効いてきます。さらに、CSは、地域の企業・人・組織がつながる「糠床」と言えるでしょう。
都氏の講演 概要
2022年度に、香川小学校学校運営協議会がスタート。
委員は、校長、教頭、総括教諭、PTA・OB。推進協委員、民生委員、公民館長など、13名。
私は当時、香川小学校教頭という立場で協議会に関わっていました。
協議会で、何度も意見交換を行う中で、夏休み期間のイベント「香川の桜」という企画が決まりました。目的は、学校を単なる施設ではなく、地域社会と共に関わり合い、繋がり合いのきっかけづくりの場とすることです。2023年度には、4年生以上の児童が、地域の大人から環境や平和の問題について話を聞いたうえで、話題にのぼった場所を訪ね歩くナイトハイクを開催しました。2024年度には「香川の桜」に加え、夏休み期間に、上級生が下級生に宿題を教える「いっしょに宿題をやろうぜ!」も実施したそうです。
CSを推進していくには、無理のない小さな成功体験の積み重ね、学びが広がる取り組み、自走する運営協議会が重要でしょう。
クロストーク、グループワーク、全体会
クロストークでは、竹原氏から、CSを資金面から支える「ヤマタロウ」基金の有効性について話題提供がありました。その後、6グループに分かれて感想を共有。全体会では、グループの発表内容を共有しました。
会の終了後も、多くの参加者が会場に残り、登壇者や他の参加者と熱いトークを繰り広げていました。