【開催報告】2018年度 異業種楽習会先進事例視察

 

2017年3月に開催した第2回異業種楽習会の参加者から、講師の内海さんが紹介してくださった「ファール ニエンテ」((社福)開く会が横浜市泉区で運営する農家レストラン・ベーカリーと農園)を見学したいとのご要望をいただき、現地視察見学会を開催しました。

 

  • ●日 時:2018年6月27日(水)午前11時~午後1時30分
  • ●場 所:「ファール ニエンテ」(〒245-0016 神奈川県横浜市泉区和泉町1011-1)
  • ●日 程:
  •  11:00:レストラン「ファール ニエンテ」にて
  •       (社福)開く会常務理事の萩原さんから概要説明と質疑応答
  •       参加者全員でランチ
  •  12:50:近隣の小麦等栽培農地に移動して見学
  •  13:15:レストラン「ファール ニエンテ」にて質疑応答
  •  13:30:現地解散
  • ●参加者:10人(NPOサポートちがさき理事・職員、社会福祉法人関係者など)
  • ●「ファール ニエンテ」概要説明((社福)開く会萩原常務理事より)

 

(開設の経緯)

・「ファール ニエンテ」は4年前にオープンした。当時、市街化調整区域の土地1055坪を地主から借りることになり、当初はグループホームを建設することも検討したが、広大な土地を有効活用できない等の理由から、最終的に、畑とパン工房とレストランという形に落ち着いた。この土地が市街化調整区域だったことから、横浜市建築局からレストランの開設許可をとるまでに2年の歳月を要した。近年、農業の分野では6次産業化が流行語になっているが、ここでは、野菜・小麦栽培、パンづくり、ベーカリー・レストランという3つの分野を網羅する事業を展開している。

 

(事業の位置づけ・組織体制・経営状況)

・パンの製造販売・レスラン部門は「就労継続支援A型事業」として運営している。1日の就労時間は5.5時間。1カ月あたり10万円程度の工賃を支払っている。農業とガーデン管理は「就労継続支援B型事業」なので、A型事業に比べると工賃は安い。

・常勤職員は、所長を含めて6人。非常勤職員が30人いる(多くは近所の主婦)。毎日、平均6~7人のスタッフが交代で仕事をしている。

・2017年度1年間の収益は8,200万円だったが、収支は若干の赤字だった。経営的には決して楽ではない状況である。

 

(レストラン・ベーカリー利用状況)

・平日は、お客さんの9割が女性。土・日は、家族連れ(3世代での来所も)が多いため、男性比率が増える。道路沿いに看板を設置している以外は、特段の広報はしていない。口コミで評判を聞いて来店する利用者が多い。今は、「食べログ」にもお店情報が載っているので、グルメサイトを見てくる人もいるかもしれない。横浜ピザランキングで11位にランクされている。

 

(建物の設計思想)

・店舗(レストラン・ベーカリーの建物)の設計は、地主の知り合いの設計士さんにお願いした。「外観は福祉施設仕様ではなく、お客さんにとって魅力あるデザインにしてほしい」と要望を出した。また、「石窯ベーカリー(工房)部分は、働き手の姿がお客さんからよく見えるように設計してほしい」とお願いした。当法人は、「表現としての労働」という考え方を大切にしており、石窯の空間は、労働者の舞台を用意したと思っている。

・私たちは、障がい者がパワフルに働く姿が、植物と一体となって一つの景色を形づくる場所を目指している。

 

(今後に向けて)

・泉区は個性的な農家が沢山ある。今、少しずつ地元の農家との関係を広げている。また、横浜市福祉局が音頭をとって始めた「農ハマライゼーションネットワーク(市内農福連携事業者のネットワーク)」に参加している。

・経営コンサルタントとパンづくりのコンサルタントからアドバイスを受け、パンの品質を上げるとともに、パン販売の売り上げを増やすための検討を始めている。とはいえ、収入増を目指して効率のみを重視すると、働く人の労働意欲を奪いかねない。バランスが大事だ。

・今は、園芸の学校を卒業したスタッフが中心となり、野菜・小麦栽培を行っている。今後は、さらに農業技術の向上を目指したい。

 

今回の視察では、「事業性(収益の確保・向上)は追求するものの、働き手一人ひとりの『想い』と個性を尊重する姿勢を片時も失わない」萩原さんの強い信念を感じました。(社福)開く会の目指す社会の姿は、きっと誰の目にも魅力的に映るのではないでしょうか。

 

小山 紳一郎